マクドナルド博士のUFO研究

第2回 1960年2月5,6日カリフォルニア州ハリウッド UFO事件


 さらに注目すべき事例がある。ハリウッドの中心部で多数の市民が極めて 異様な物体を目撃した事件である。このとき低空で静止した物体が不可解 な現象を引き起こした。
 この事件はLANS(NICAPロサンゼルス分科会)が、念入りな調査を行っている。 事件は、1960年2月5日金曜日と6日土曜日の夜11時過ぎに、二晩連続で発生 した。場所はサンセット大通りとラ・ブレア通りの交わる交差点付近、つ まりハリウッドのど真ん中である。私は、事件調査の主要メンバーである LANSのIdabel Epperson夫人と一緒に、現場を調査した。新聞記事を調べた が、底の浅い内容だった。またLANSと公的機関の調査結果を比較した。この 事件は非常に複雑なので、細部に渡ってすべてを紹介することはできない。 21ページぎっしりタイプされたLANSの報告でも、事件を実証するためにNICAP が行った目撃者へのインタビューのダイジェストにすぎない。LANSの報告 は、金曜の8人と土曜の18人の物体の描写を要約している。目撃者には警察 官も含まれる。
 サンセットとラ・ブレアの交差点付近で事件のときに働いていた人による と、みなそこら中に車を止め、息を飲んで頭上の物体に見入っていた。ホテ ルやマンションの人たちは屋上に出て、明るい「サクランボのような赤い丸 い光」を見ていたが、これは両日とも出現している。どちらの日も赤い物体 は午後11時15分頃に出現し、、動きを止めて10分ほど静止滞空していた。赤 い光の大きさの視角についての証言には幅があるが、月の直径の4分の1から 3分の1くらい程度、角度にして5〜10分だった。ほぼ全員一致しているのは、 その輪郭がかなりはっきりしていたことである。20数名にインタビューした 場合、証言に食い違いが見られるのはよくあることで、光が振動していたと いう人や静止していたという人がいた。しかし、ほとんどの証言が一致して いることは、きわめて異例な現象であることを示している。
 金曜の夜、赤い光体は初めサンセット大通りとラ・ブレア通りの交差点の真 上で目撃された。交差点にあるガソリンスタンドの二人の従業員、Jerry Darr とCharles WalkerはLANS(NICAPロサンゼルス分科会)の調査員に状況を説 明した。

「……数百人もの人がそれを見てたよ。(光体が5分以上、出入りの多いド ライブイン上空に浮かんでいるのを)みんな見てたんだ」

 そこから北に3分の1マイル離れたところにあるガソリンスタンドの従業員 Ken Meyeによれば、その滞空時間は約10分だったと述べている。Harold Sherman とその妻、そして他にもう2人は、その後物体が低速で東の方向へ動き出した ところを目撃している(上述の目撃者たちも同じことを証言している)。 目撃者たちによれば、だいたい1ブロックか2ブロック程度の距離を東へ進ん だ後、南東の方向へ進路を変え、それから見えなくなった(建物の陰に隠れ て見えなくなったのか、光そのものが消灯したのか、遠方に飛び去ったのか ははっきりしない)。通りには騒音があり、物体に起因する音は聞こえなか った。

 次の日の夜も、同じ物体と思われるものが出現した。両日とも目撃した数 人によれば、最初に目撃された位置は、前日のときよりも約1ブロック東だ った。
 物体の高度を概算するため、各目撃地点からの仰角を元にして三角測量が行 われた。LANSは、最初に目撃された時点での物体の滞空位置が、サンセット 大通りとシカモア通りの交差点の上空約500〜600フィートであると結論した。 多くの目撃者が、物体はその位置で10分ほど全く動かずに滞空していたのを 目撃している。その後、物体が大きな爆発音と共に眩しい青白い閃光を発し た。目撃者はみな、その爆音は、聞いたことのある航空機の爆音や、一般的 な爆発音とは違う、と証言している。その音は、遠く離れたカーソン通りと ハリウッド通りにいた目撃者たち(Tom Burnsと友達同士の匿名の2名)にま で聞こえた。
 半径約1マイルの円内の様々な位置にいた目撃者たちの証言をまとめると以 下のようになる。
 物体は爆発する前には、“空に吊るされた大きな赤いクリスマスボールのよ うに”見えていた。突然、物体から、閃光が下方と西方向に伸び、ラ・ブレ ア通りにいた証言者(Soe Rosi)の周辺一帯の地面を照らした。目撃者全員 に強い印象を与える色をした“キノコ雲”が立ち昇り、すぐに消散した。赤 い光が消失すると同時に、(全員ではないが)ほとんどの目撃者が長い円筒 状の形状だと証言する物体が上方へ打ち出された。角度による推定から数十 フィート(Harold Shermanの概算では70フィート)の長さの物体と見られて いる。
 高度500フィートの位置で視角がわずか10分しかない発光体から、これほどの 大きさの物体がどうやって現れたのかについては、説明が困難である。ただ し、最初からそのサイズの物体が存在しており、物体下部の赤い光が非常に 明るかったために本体が見えなかった可能性もある。あるいは、推定した視 角が間違っているのかもしれない。一部の目撃者が筒状の物体が上昇するの を見ていたが、他の目撃者は爆発源から何かが「螺旋状に降下」するのを目 撃しただけでである。落下したものが何なのか誰もわからなかった(“赤い 残り火”のようだったという者が一部にいた)。地面に落下するのを見てい たものは誰もいなかった。
 この“爆発”はサンセット大通りとシカモア通りの上空、推定高度5〜600フ ィートで発生したわけだが、さらに興味深い出来事が続く。
 目撃者たちが次に気づいたのは、消滅したばかりの赤い光が別の位置、西へ 1ブロックほど離れたところに再び出現したことだった。ロス市警のBay Lopez とDaniel Jaffeeはその時サンセット大通りとラ・ブレア通りの交差点にい たが、爆発音が聞こえたので空を見上げた。光が新たに出現した位置は彼ら の“真上”だった。同交差点にいた多くの人々も赤い光体を目撃し、そのま ま約3分間滞空していた。(スペースの関係上、推定時刻に関するすべての情 報は記載できない。LANSの全21ページの要約参照。たとえば爆発の時刻は、 およそ1マイル西に在住の建設業者E. W. Cassの情報でほぼ特定できた。彼 は目覚まし時計を巻いているときに、閃光が“寝室全体を照らした”のだが、 そのとき時計の針が11時30分を指していたのである。彼は家の外に出ると、 上述の新たな出現位置に赤い光が滞空しているのを目撃した。彼はさらに詳 しい話も述べているが、ここでは省略する。他の目撃者にも時刻を推定する 手がかりがあった。たとえば11時30分のTVコマーシャルが始まったちょうど その時に、妙な爆発音を聞いたので急いで外に見に行ったケースなど) サンセット大通りとラ・ブレア通りの上空に現れた赤い光の位置は、大ざっ ぱな三角測量によれば1,000フィート上空だった。この数字は、何人かの目撃 証言と一致する。すなわち、“爆発”のおよそ4〜5秒後に光が再出現した際、 その位置はやや西へと移動し、高度も明らかに高くなっていた、と証言して いるのである。推定で8分間その位置に滞空した後、光は東の方にゆっくりと 動きだした。これは前日と同じような状況だが、前日の状況はこれほど派手 ではなかった。目撃者の1人Larry Moquinは、屋根の輪郭を使って、かなり注 意深く位置を測定しており、この状況を観測した。
 ラ・ブレア通りとサンセット大通りは見物人であふれた。

「誰も彼もが車から出て空を見上げ、おかげで通りは渋滞だったよ。みな口 々に『何だろう?』と話していた」

 ゆっくりと、安定した移動(目撃者たちの話では、急速な移動やジグザグ運 動、変則的な動きなどはしていなかったという)を行い、東へ1ブロックほど、 つまり最初の出現地点まで移動し、北北西の方角に急旋回して加速、急上昇 した。再び停止したのは、ずいぶん北寄りの方角でかなりの高高度に達した 後であった。
 LANSの調査員は簡単な三角測量を用いて、この滞空位置を高度25,000フィー ト以上と推定した。ただし元のデータから明らかな通り、この推定値はきわ めて大雑把な値だ。

考察
 1960年2月のハリウッドの事例について、現在までのところ私は目撃者にイン タビューを行っていない。だが、LANSの研究態度は実直で信頼に値するもの であることは私が保証する。彼等が行った非常に多くのインタビューは裏付 けが取れており、また内容の整合性も高い。これらの情報は、極めて異常な 飛行装置が問題の二晩、ハリウッド上空を機動飛行していた、ことを示して いる。
 報告のきわだった特徴のほとんどを証拠として採用しない、というのであ れば話は別だが、明らかに気象学的、天文学的説明は該当しない。また既存 の航空機には、報告に適合するようなものは存在しない。
 最初に疑いがもたれるのは、いたずらの可能性である。しかし、上述の複 雑な機動(完全に静止、風に逆らって移動、爆発して別の物体を放出、さら に2月6日にはかなり高高度まで上昇)を実現可能な物体を製作するとすれば、 相当な資金および技術が必要だ。これは、いたずら好きな学生にできるレベ ルのものではない。問題の現象は、気球程度の単純な方法では到底不可能で ある。はるかに緻密な仮説を立てなければ、報告された事象をいたずらとし て説明するのは無理だ。
 気球であれば風に流されるはずである。現場上空における問題の二晩の風速 風向データをLANSが確認した結果、報告にあるような動き方と、地表〜1,000 フィート上空までの大気層中の風速風向との間には、一致が見られなかった。 また、交互に静止滞空と移動を行っていることに加え、急に方向転換しても 高度が変化しなかった点は、気球が風に流される場合の動きとは違っている。 要するに、この事例は、高度に制御された飛行装置が関わっていたと考えら れるのだ。この物体は、(2月6日の事例の場合)地面に対してほぼ正確に一定 の位置で静止滞空する能力があったのである(Moquinは注意深く観測し、赤 い光体がラ・ブレア通りとサンセット大通りの真上に滞空しているときに、 建物を利用して光体の位置を測定した。彼によれば、数分間にわたって光に は何の動きも認められなかった)。ところが気象局によると、高度1,000フィ ート(すなわち問題の滞空位置を三角測量で求めた高度)では風速が南西の風 時速5マイルだったのである。

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