核実験とUFO

桑原恭男


"Relationship between UFO Sightings and Nuclear Tests" ,2004.01.31


 

 

 ニューハンプシャー州ボウ,サンリバー研究所のドナルド・A.ジョンソン博士の論文,“Do Nuclear Facilities Attract UFOs?”(核施設はUFOを引きつけるのか?)では,核施設のある郡と,人口数が同規模で核施設がない郡で,UFO目撃数および近距離遭遇(CE)数に差があるかどうかを調査している1)
 それによると,UFO目撃およびCEとも,核施設がある郡の方が1.44倍多いことがわかった.郡の人口の規模が小さいほど,その比率は拡大し,人口5万人未満の郡では,目撃数で2.06倍,CEで1.69倍となる.そして,ジョンソン博士は,UFOの背後に核兵器や核動力に関心を示す知性体が存在している可能性を示唆している.

 この論文では核実験に限って分析を行う.また地理的な相関ではなく時間的な相関を調べる.調査したのは,核実験場のあるネバダ州での年間の,記録されたUFO目撃事例(以下単に“UFO目撃”と記す)数と核実験の回数との相関,およびUFOが目撃された日と核実験が行われた日の相関である。

 UFO目撃のデータはUFOCAT20002)を使用した.ネバダ州での核実験の日付については,ウェブサイト“Federation of American Scientsts”内の“United States Nuclear Tests July 1945 through September 1992, DOE/NV-209 (Rev. 14), December 1994 ”3)のデータを使用した.
 UFOCATのデータの日付は現地標準時で示されているが、核実験のデータはグリニッジ標準時となっている。ネバダ州とイギリスでは8時間時差(ネバダ州の方が遅い)があるが、核実験の方には時刻についてのデータが含まれていないので、時差を考慮した日付に修正することはできなかった。

表1.ネバダ州での年間の
UFO目撃件数と核実験回数.

目撃実験
19511512
1952238
19531611
1954140
19552217
195691
19574032
19583935
195950
196070
1961299
19625959
19633337
19643742
19653735
19664545
19675537
19684348
19693431
19703130
19711319
1972722
1973818
1974322
1975120
19761118
1977117
1978217
1979116
1980116
1981117
1982017
1983019
1984019
1985116
1986015
1987015
1988014
1989112
199029
199118
199206
平均15.40 20.02
 ネバダ州での1951年〜1992年の各年の核実験回数とUFO目撃数を表1に,その二つの属性の関係を図1に示す.核実験の回数とUFO目撃の回数の間には明らかに相関が見られる.相関係数は0.77である.



図1.ネバダ州での1951年〜1992年の各年の核実験回数とUFO目撃数の関係.縦軸が核実験数,横軸が目撃数.核実験の回数とUFO目撃の回数の相関係数は0.77である.



 表2に、1951年〜1992年の期間の、ネバダ州で核実験が行われた日とそうでない日の1日当たりのネバダ州でのUFO目撃数を示す。1973年までは核実験が行われた年の実験日1日当たりの目撃数は、非実験日のそれよりもかなり大きいが、それ以降はそのような傾向は見られない。だが,全期間総合しても40倍以上,実験日での目撃率が高くなっている.

 次にカイ二乗検定で,二つの属性の関連性を見てみよう.
 核実験とUFO目撃のクロス集計表を表3に示す.ここでの帰無仮説は,「核実験とUFO目撃に関連性はない」というものである.この仮説を有意水準1%で検定する.2×2のクロス集計の場合,自由度は1であり,χ2(1;0.01)は6.63である.この値以上が棄却域となるので,検定統計量がこの値以上あれば,帰無仮説は棄却され,「核実験とUFO目撃には関連性がある」ことになる.
 クロス集計表から求めた検定統計量は4558.62であり,6.63より大きいので,帰無仮説は棄却された.


考察
 この調査ではUFO目撃と核実験の間には非常に強い相関が見られた.可能性として考えられるのは,核実験に伴い,上空にUFOと誤認されやすい何かを飛ばす必然性があった,というものである.これは実験に直接関係する物体の場合だけでなく,UFOを心理戦に利用するための研究目的で,核実験には必要ない何かを飛ばした可能性も考える必要があるだろう.
 航空機からの核爆弾の投下実験については,その回数は10回だけなので,その航空機の誤認でこの強い相関を示すのは無理である(ただし、それ以外の実験で,観測機が飛行していた可能性はある).
 次に考えられるのは,核実験とUFOを結びつける心理が目撃者側に働いていた(そのために,通常の物体を誤認しやすい状況が生じた)可能性である.
 上記二つの仮説に対しては,個々の目撃事例の特異性に着目することで,通常の物体の誤認の可能性を評価できるであろう.もし,地球外仮説のような,今日受け入れられていない仮説を評価しようとする場合は,実験日に観測されたUFO事例の中から、信頼性、特異性とも高い事例をどの程度拾い出せるか調べる必要がある.
 UFOの背後に未知の知性体が存在するという前提で,この相関を考えるならば,その知性は核に対して異常なほど関心を示している,ということは言えるだろう.ただし,UFOが地球外知性体が制御している物体であるという前提(地球外仮説)に立てば,高度な技術を有するであろう彼らは,当然遠方から必要なデータを入手できるであろうから,実験場近くに姿を見せる目的はデータ収集ではなく,「強い関心を示している」と我々に理解させたい,ということになると思われる.

表2.ネバダ州での核実験日およびそれ以外の日のUFO目撃件数(ただし日付が判明している目撃のみに限定).

全目撃実験日
の目撃
他の日
の目撃
実験日数実験日
以外
a.実験日
1日当たり
の目撃数
b.非実験日
1日当たり
の目撃数
a/b
195114122123531.0000 0.0057 176.50
19522391483581.1250 0.0391 28.77
195315114113541.0000 0.0113 88.50
19549 90365 0.0247  
195522148163490.8750 0.0229 38.17
195671613651.0000 0.0164 60.83
195739318313341.0000 0.0240 41.75
195839327263391.2308 0.0206 59.60
19595 50365 0.0137  
19606 60366 0.0164  
19612882093560.8889 0.0562 15.82
196259536583070.9138 0.0195 46.76
196333276373280.7297 0.0183 39.89
196437316423240.7381 0.0185 39.86
196537298353300.8286 0.0242 34.18
196644395443210.8864 0.0156 56.90
1967533320373280.8919 0.0610 14.63
196842375473190.7872 0.0157 50.23
196933267313340.8387 0.0210 40.02
197031301293361.0345 0.0030 347.59
197113103193460.5263 0.0087 60.70
1972770223440.3182 0.0000  
1973752183470.2778 0.0058 48.19
1974202223430.0000 0.0058 0.00
1975101203450.0000 0.0029 0.00
197611011183480.0000 0.0316 0.00
1977101173480.0000 0.0029 0.00
1978202173480.0000 0.0057 0.00
1979101163490.0000 0.0029 0.00
1980101163500.0000 0.0029 0.00
1981101173480.0000 0.0029 0.00
1982000163490.0000 0.0000  
1983000173480.0000 0.0000  
1984000193470.0000 0.0000  
1985101163490.0000 0.0029 0.00
1986000153500.0000 0.0000  
1987000153500.0000 0.0000  
1988000143520.0000 0.0000  
1989101123530.0000 0.0028 0.00
199000093560.0000 0.0000  
199100083570.0000 0.0000  
199200063600.0000 0.0000  
 625445180823145180.5407 0.0124 43.61

表3.ネバダ州での核実験日とUFOが目撃された日
(UFO目撃の件数ではない)についてのクロス集計.

 核実験日非実験日
UFO目撃394196590
目撃なし4291432214751
8231451815341
 今回の論文では,核実験が実施された日と記録されたUFO目撃の日の間に非常に強い相関をあることを示したが、その相関の原因を特定あるいは限定するところまでは行わなかった。それについては次報以降で行うことにする。



(1)http://www.cufon.org/contributors/DJ/Do%20Nuclear%20Facilities%20Attract%20UFOs.htm
 博士は以下の核施設でのUFO目撃を取り上げている.1948年12月(ロスアラモス),1950年12月(オークリッジ),1952年7月(ハンフォードAEC[原子力委員会施設],サバンナ川AEC,ロスアラモス),1965年8月(ワイオミング州シャイアン近くのウォーレン空軍基地),1967年3月(マイノット空軍基地,マルムストロム空軍基地,ロスアラモス),1968年8月(サウスダコタ州エルスワース空軍基地), 1975年10月27日〜11月10日(メイン州北部のローリング空軍基地,ミシガン州ワートスミス空軍基地,ノースダコタ州グランドフォークス空軍基地,マイノット空軍基地,モンタナ州マルムストロム空軍基地),1980年8月(ウォーレン空軍基地,サンディア研究所,ニューメキシコ州カートランド空軍基地),1980年12月(イギリス,サフォーク州ベントウォーターズ英空軍基地),1991年10月(ウクライナ,チェルノブイリ,ロシア,アルハンゲリスクミサイル基地).
 さらに1986年のチェルノブイリ核惨事のときにもUFOが出現,火災が発生した第4原子炉に光線を照射,それにより放射線のレベルが3000ミリレントゲン/時から800ミリレントゲン/時に低下したと言う.それに関する引用文献は Stonewell, Paul (1998). The Soviet UFO Files. New York: Quadrillion Publishing, pp. 68-69.

(2)UFOCAT2000を使用したが最新版はUFOCAT2003.172,000件以上のUFOデータが収録されている.なおUFOCAT2000にはHUMCAT(UFOと一緒に目撃された生物やロボットらしきものに関するデータベース)も含まれているが,たぶん最新版にも含まれていると思われる.
UFOCATのサイト http://www.ufocat.com/

(3)http://www.fas.org/nuke/guide/usa/nuclear/usnuctests.htm の“Chronological Section”にあるPDFファイル,“United States Nuclear Tests - By Date”.


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