羽田空軍基地UFO事例5.レーダーによる観測>c.GCIによる最初の飛行物体の捕捉

c.GCIによる最初の飛行物体の捕捉
 F-94がジョンソン空軍基地を離陸する直前,B中尉は,最初の,明らかに異常な移動目標を捕捉した.時刻は約0000〜01である.ブルーブックに記載されている彼の証言によると,「スクランブルした時刻に,私は物体と思われるものをレーダーで捕捉しました.その物体は白井の真南の東京湾上にあり,羽田からは北東約8マイルのところにありました.目標は円軌道を描き,速度を変えながら移動していました.距離が短かったことと,レーダー観測の時間が短かったことから,速度を推定できませんでした」.
 この証言はコンドン報告でも取り上げられているが,その次の部分が省略されている.次の部分は,マルヴィン大尉の要約が収められており,B中尉の発言は目標の飛行速度を正確には推定できない,というところにあったことを示している.この省略部分は,異常伝播説(コンドン報告がレーダー観測を説明するために採用した考え方)が信頼するに足りないことを示す一つの証拠として興味深い.

「F-94に調査のための発進が命じられた.このとき,物体はすでに地上クラッタを脱しており,円軌道を描いて速度を変えながら移動しているのをCPS-1で捕捉することができた.その速度を正確に推定することはできなかったが,B中尉はおおよそ100〜150ノットと推定している.物体はときおり停止,静止滞空し,2周目(F-94に進路指示が与えられる直前)には250〜300ノットと思われる,観測中では最高の速度で移動した」

 IR-35-52に付随する地図には,未知目標が描いた軌道が記入されている.軌道の半径は約4マイルで,その中心は東京の東,船橋市の沖合である.軌道の半分は陸にかかっており,半分は海上である.地図に記入されたスケッチと,ファイルにある記述とから,GCIが目標をはっきり捕捉したのは,目標が湾上に移動していたときだけであることがわかる.CPS-1の地上クラッタパターンも同じ地図(とファイル中のその他の地図)に記入されている.このパターンによると,円形軌道の陸上部分のほとんどが地上クラッタ域内にある.目標が陸上を飛んでいるとき,レーダーでそれを捕捉できなかったのはそのためである.おそらく,このCPS-1レーダーにはMTIが備わっていなかったであろう.残念なことである.
 半径4マイルの軌道の円周は約2.5マイルである.B中尉が推定している1周目の飛行速度100〜150ノット(0001頃の飛行速度)に基づいて計算すると,軌道を1周するのに要する時間は約12〜13分である.この推定値は非常に大ざっぱなものであるが,目標が再びレーダーに現れたのが0012であるという事実と,かなりよく一致している.2周目に入った目標は3個の目標に分裂し,F-94の追跡を受けて再び陸の方向へ飛び去った.
 軌道を描いて飛行していた物体が,羽田から目撃された発光体と同じものであるとするならば,羽田から見て,方位角にして約30°の範囲内を行ったり来たりしなければならなかったはずである.しかし,羽田の目撃者はそのような運動を報告していない.したがって,私は,羽田で目撃された物体と,レーダーがとらえた軌道飛行する物体とは,異なったものであるという結論に到達せざるをえない.



マクドナルド博士のUFO研究――羽田空軍基地UFO事例

Case 3. Haneda Air Force Base, Japan, August 5-6, 1952.
in "SCIENCE IN DEFAULT: 22 YEARS OF INADEQUATE UFO INVESTIGATIONS"
James E. McDonald, Institute of Atmospheric Physics, University of Arizona, Tucson
(Material presented at the Symposium on UFOs, 134th Meeting, AAAS, Boston, Dec, 27, 1969)



要約
1.序
2.目視観測
   a.最初の目撃
   b.立川空軍基地での目撃
   c.発光体の方向,強さ,形
   d.発光体の見かけの動きに関する報告
3.目視観測についてのブルーブックの説明
4.目視観測に対するコンドン報告の説明
5.レーダーによる観測
   a.白井GCIレーダーによる初期の捕捉の試み
   b.F-94のスクランブル発進
   c.GCIによる最初の飛行物体の捕捉
   d.2周目とF-94による迎撃の試み
6.レーダー観測に対するコンドン報告の説明


 


SSPCのUFO書籍・資料
「レーダー捕捉UFO事例の研究」 「未確認飛行物体に関する報告」 「コンドン報告第1巻」
「ブルーブックケースファイル」 「米下院UFOシンポジウム」 「コンドン報告第3巻」
「全米UFO論争史」 「ヨーロッパのUFO」


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