全米UFO論争史 >第5章 コンタクティとUFOマニア

 未確認飛行物体に対する大衆の関心が高まるにつれ,UFO現象は大衆文化に取り込まれていった.この現象はその特徴が原因で,SF,ファンタジー,センセーショナリズム,そして作り話の対象になった.1950年代の初期から中期にかけて,米国社会では二つのグループがその現象のセンセーショナルな側面を利用した.予想通り,ハリウッドの映画産業が早くからUFOを観客増加に利用した.しかし,最も大衆の注目を集めたグループはコンタクティ──他の惑星の知的生命体と個人的に接触,会話したと主張する人々であった.空軍がUFO報告の数を減少させようとしているその同時期に,コンタクティの人気が上昇し,世間の注目を集め,空軍の邪魔をした.同様に,コンタクティは,UFO現象に関心を持ち,大衆や空軍にUFO現象を真剣に受け止めるよう説得している人々の妨げにもなった.皮肉なことだが,コンタクティは,バカげたように見える主張を行ったことで,UFO目撃者全体が嘲笑されることとなり,空軍を助けることにもなった.コンタクティはUFOの起源にまつわる論争には直接参加しなかったが,多くの人を組織化し,一つの勢力となったのである.
 1950年代以降,名声のある人物がUFOとの近距離遭遇を主張する例が多く存在する.地元で尊敬されている教師,牧師,警察官といった,嘘をつく理由のない人々がUFOの内部,あるいは近くで生物や搭乗者を目撃したと主張した.困惑し恐怖を感じた彼らは,異常な体験を合理的に説明してもらいたくて,警察や空軍にその体験を報告することが多々あった.匿名を要求し,世間の注目やお金には興味がないことも多かった.彼らのUFO体験はあまりにも異常に見えた.彼らの背景からは,決して幻想を抱いたり,作り話をするような人物には見えなかった(厳密な研究ではその可能性を無視することはできないが).目撃者は,押しつぶされて焦げた草,折れた木の枝,地面の深いくぼみが証言を裏づけている,と体験の根拠を示すこともあった.UFOとの遭遇で,電気機器の不調,自動車のエンジン停止,ラジオへの干渉のような現象が生じたと主張することもあった.
 このグループは,地球外知性体と会話したという妄想を持つような,明らかに心理学的に異常な人々とは異なっている.そういう異常な人々の場合は,宇宙から信号を受け取ったとか,神秘的な宇宙人との遭遇を体験したと主張した.その体験は想像することが困難なものではないし,そのストーリーは通常,首尾一貫せず,矛盾が多く,心霊的,オカルト的な面があった.最初のグループの人々は一般に公表を望まず,故意に作り話をでっち上げたりはしなかった.
 コンタクティが語るUFO目撃は,それまでのものとは完全に異なるタイプのものだった.

(後略)



一世を風靡したコンタクティたち


ジョージ・アダムスキー.火星,金星,土星,木星人が乗る宇宙船に招待され,宇宙の哲学者と語り合う.彼らは優しく慈悲深く,最終核戦争から人類を救い,宇宙にも害を与える核実験を阻止するためにきたという.


トルーマン・ベサラム.地球軌道上で太陽の反対に位置するクラリオン星の美人船長から,堕落した地球の風潮,核戦争の恐怖,正しく行動すれば謳歌できる牧歌的生活の説明を受ける.


ダニエル・フライ.フライングソーサーに乗せられ,ニューメキシコからニューヨークまで往復30分で飛行.飛行中,核兵器の恐怖について教えられ、核戦争防止のためこの体験を本にするよう説得された.


オルフィオ・アンジェルッチ.「人類の精神的進化」を記録するために地球を訪れた「スペースブラザー」から地球の危機について教えを受ける.自分の前世が宇宙人で,彼らとは永遠の愛で結ばれていることを理解する.


ハワード・メンジャー.,日本兵との白兵戦時,宇宙人に助けられる.月世界を案内され,ガイド付きツアーを体験.前世は木星人.自分の講演に来ていた美しい女性の前世が宇宙人で,運命の出会いであると悟り,結婚.


バック・ネルソン.月,金星,火星を旅行.太陽系のほとんど全ての惑星の統治者と夕食を共にする.その証拠となる金星のセントバーナード犬の毛を販売.


ジョージ・バン・タッセル.地球生命の起源や永遠の若さを得る装置の設計を宇宙人から教わる.コンタクティの祭典,ジャイアントロック・コンベンションを開催.


ジョージ・ハント・ウィリアムソン.ハム無線機とウィジャ盤で火星人と交信.


ローラ・マンドー.宇宙人からラジオを通してメッセージを受け取った.


ダナ・ハワード.金星人と結婚し,家族をもうけた.



  目次(リンクをクリックするとその一部が読めます)



原書表紙
   序文
   謝辞
   用語について

   第1章 謎の飛行船 ─― 論争の序曲
   第2章 現代のUFO目撃始まる
   第3章 1952年のUFO目撃ウェーブ
   第4章 ロバートソン査問会
   第5章 コンタクティとUFOマニア
   第6章 1954〜1958年 ―─ NICAPの台頭
   第7章 議会公聴会開催を巡る争い
   第8章 1965年 ─― 論争の転機
   第9章 コンドン委員会とその余波
   第10章 1973年 ── 過去からのこだま

   空軍が受けた年間UFO報告数の変化
   日本語版あとがき
     ・閲覧可能となった米政府文書
     ・目撃報告の減少
     ・ロズウェル事件
     ・ネオコンタクティ
     ・UFO研究界
     ・陰謀論
     ・アブダクション
     ・次の段階
   註
   情報源について
   主要参考文献
   著者経歴
   索引


   本書で取り上げた書籍一覧


 



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